• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

1997 年度 実績報告書

カリニ肺炎医薬品と評価システム開発の試験研究

研究課題

研究課題/領域番号 07557027
研究機関東京大学

研究代表者

中村 義一  東京大学, 医科学研究所, 助教授 (40114590)

キーワードエイズ / カリニ肺炎 / ニューモシスチス・カリニ / 抗原変換 / 表面抗原遺伝子 / テロメア / 遺伝子スイッチ / サチライシン様プロテアーゼ
研究概要

カリニ肺炎をおこすニューモシスチス・カリニの主要表面抗原(MSG糖蛋白質)は、病原性の中心分子であるが、その機能・動態、及び創薬・臨床応用に関する研究を実施し、次のような研究成果を得た。
1.MSG蛋白質は多型、多重性の遺伝子ファミリーによりコードされるが、14ある染色体のひとつのテロメア領域にだけ発現部位が存在し、ゲノムDNA間の組換え反応によつてMSG遺伝子の発現が切り替わる「抗原変換スイッチ」を発見した。これは、ニューモシスチス・カリニが属する真菌では、初めて発見された抗原変換である。
2.MSG遺伝子上での可変部、保存部を特定し、全てのMSG蛋白質に保存されるN端109アミノ酸の組換え体ペプチドを過剰産生、精製する系を作成し、ワクチン試験およびグロブリン製剤開発の組換え抗原の供給態勢を整えた。
3.MSG遺伝子クラスターには、機能未知な蛋白質の遺伝子(ORF-3)が常にコードされていることを、これまでのゲノム解析から明らかにしてきたが、今年度はORF-3のcDNAを分離した。その結果、ORF-3遺伝子はC末端に疎水領域を持つ、細胞表面アンカー型のサチライシン様プロテアーゼ(SSPと命名)であることが明らかになった。過剰発現系を作成し、組み換え蛋白質でその活性を試験しているが、ニューモシスチス・カリニの肺胞局在・病原性に関与するか、あるいはMSG蛋白質の保存部と可変部の境界を切断する新規なプロテアーゼとして抗原変換に関与する可能性が考えられる。
4.ニューモシスチス・カリニは未だにin vitroの培養ができないため、動物モデルに依存しないような、新規な抗カリニ薬のスクリーニング系の作成が望まれる。我々はニューモシスチス・カリニとその近縁性が近年指摘されている酵母におけるヘテロな遺伝子発現を検討した。出芽酵母では、MSG発現部位(プロモーター)は作動しなかったが、分裂酵母では、試験した他の数種類のプロモーターを含め、十分な発現活性を示した。この結果は、ニューモシスチス・カリニが分裂酵母により近縁であることを示唆すると共に、このヘテロな発現系が今後の薬剤スクリーニング系の構築や、MSG遺伝子スイッチに関する分子レベルの研究に有用なことが明らかとなった。

  • 研究成果

    (10件)

すべて その他

すべて 文献書誌 (10件)

  • [文献書誌] Mita,K., Morimyo,M., Ito,K., Sugano,K., Ebihara,K., Hongo,E., Higashi,T., Hirayama,Y., Nakamura,Y.: "Comprehensive cloning of Schizosaccharamyces pombe genes encoding translation elongation factors." Gene. 187. 259-266 (1997)

  • [文献書誌] Ito,K., Nakamura.Y.: "Cloning and overexpression of polypeptide release factor l of Thermus thermophilus." Biochimie. 79. 287-292 (1997)

  • [文献書誌] Nakamura,Y., Wada,M.: "Molecular pathobiology and antigenic variation of Pneumocystis carinii." Adv.Parasitol. 41. 63-107 (1998)

  • [文献書誌] Wada,M., Nakamura,Y.: "Closing and overexpression of cell surface subtilisinlike proteases (SSP) of Pneumocystis carinii." J.Euk.microbiol. 54. 54S (1997)

  • [文献書誌] Wada,M., Nakamura,Y.: "Heterologous expression of Pneumocystis carinii genes in fission yeast." J.Euk.Microbiol.44. 55S-56S (1997)

  • [文献書誌] Moffat,J.G, Pel,H.J., Ito,K., Nakamura,Y., Tate,W.P.: "Escherichia coli release factor-3 : resolving the paradox of a typical G protein structure and atypical guanine nucleotide effects on function" RNA. 4. 47-54 (1998)

  • [文献書誌] Nakamura,Y.: "The major surface antigen of Pneumocystis carinii." In PrFEMS Immun.Med.Microbiol.(In Press). (1998)

  • [文献書誌] Nakamura,Y.: "Molecular microbiology of Pneumocystis carinii." Jpn J.Med.Mycol.(In Press). (1998)

  • [文献書誌] Desgupta,S., Fernandez,L., Kameyama,L., Inada,T., Nakamura,Y., Pappas,A., Court,D: "Genetic uncoupling of the dsRNA-binding and RNA-cleavage activities of the Escherichia coli endoribonuclease RNaseIII-the effect of dsRNA binding on gene expression." Mol.Microbiol.(In Press). (1998)

  • [文献書誌] Ito,K., Ebihara,K., Nakamura,Y.: "Dissection of tRNA mimicry element of protein release factor eRFI of fission yeast : eRF3 binding is not necessary for eRFI function and cell viability." RNA. (In Press). (1998)

URL: 

公開日: 1999-03-15   更新日: 2016-04-21  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi