研究概要 |
本研究では、セレン安定同位体の自然存在比と、スパイク後の比の変化が重要であり、いくつかの同位体を同時に測定する必要がある。測定条件によりある同位体の測定感度だけが著しく影響を受ける場合、解析は不可能である。そこで測定を行う安定同位体の組み合わせについて検討を行い、^<77>Seと^<82>Seの組み合わせが最適であり、スパイク用安定同位体として^<77>Seを選択した。また、ゴ-ストピークの検出用に^<78>Seの同時にモニターすることとした。ICP質量分析装置はアルゴンガスを用いるため、自然存在比のもっとも高い^<80>Seの測定は事実上不可能であるが、他の同位体、すなわち^<77>Se,^<78>Se,^<82>Seの測定では、十分な感度が得られた。また、化学形別分析に用いるゲルろ過法および高速液クロとの直接接続が可能であり、安定性も満足のいくものであった。今年度は、測定法の確立および干渉の程度の確認およびゲルろ過法、高速液クロとの直接接続など、当初予定していた基礎的な検討事項をすべてクリアすることができた。また、高速液クロとICP-質量分析装置を組み合わせること(HOLC-ICP-MS法)により、血漿中セレンを3つの成分に分離し測定することが可能であり、3成分のうち、1つはアルブミン、もう1つはリポタンパク等の高分子成分であること、他の1つは、十分な確証はないが、Selenoprotein-Pである可能性が高いことなどを明らかにした。また、通常食後(30分後)の血漿中セレン分析では、アルブミンおよび高分子画分のセレンに増加が見られた。また、生体試料に特有なミネラル成分による干渉については、高速液クロを用いることにより、セレンを結合している高分子成分にくらべミネラル等の低分子成分がカラムから遅れて溶出されるためにこれらの干渉を受けることなくセレン測定が可能であるという利点も判明した。
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