研究概要 |
C型肝炎ウイルスに対するT細胞応答を利用した新しい予防法,治療法を開発するための基礎的検討を行った.HLA B44を有する慢性C型肝炎患者末消血のC型肝炎ウイルス量と細胞障害性T細胞応答の検討から,C型肝炎ウイルス特異的細胞障害性T細胞がウイルス増殖を抑制している可能性を先に明らかにした.本年度は,HCVコア抗原を哺乳動物細胞に効率良く発現するプラスミドDNAをマウスおよびチンパンジーに投与し,HCV特異的CTLおよびHCV特異的ヘルパーT細胞の誘導を試みた.用いたプラスミドDNA pX-HCVcoreはHBxプロモーターの下流にHCVコア抗原をコードするcDNAを挿入したプラスミドで,トランスフェクトした動物細胞で安定して,コア抗原を効率良く発現することが可能である.マウスにおいてはBALB/Cマウスに3週間おきに50μgのプラスミドを2回筋注後,3週間後にマウス脾細胞を採取し,P815細胞にHCVコア遺伝子をトランスフェクトした細胞と共にIL-2含有培養液で培養後,HCVコア抗原を発現する遺伝子組み換えワクシニアウイルス感染P815細胞を標的として,細胞障害活性を測定した.チンパンジー実験では,3週間おきに3回pX-HCVcore2mgを皮内および筋肉内に注射するとともに,ヒトGM-CSF遺伝子2mgを筋注した.最終投与3週後に,末消血リンパ球を10アミノ酸づつオバ-ラップし,HCVコア抗原全長をカバーする20アミノ酸の合成ペプチドで刺激し,刺激に用いたペプチドでパルスしたチンパンジーのB細胞株を標的として,HCVペプチド特異的CTL活性を測定するとともに,リンパ球をHCVコア抗原で刺激し,ヘルパーT細胞活性を測定した.しかしながら,マウスにおいてもチンパンジーにおいてもHCVコア特異的T細胞応答を誘導することはできなかった.現在,分泌型HCV抗原を細胞内で産生するプラスミドDNAを作製し,HCV特異的T細胞応答の誘導を試みている.
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