(1)基礎的検討 luminol-H_2O_2化学発光法を用いたラット単離灌流腎におけるNO遊離速度の測定により高血圧性血管ではNO遊離能が減弱するが、その機序に高血圧の成因による差が存在することが明らかとなった。即ち食塩依存性高血圧ではNO合成酵素自体の減少によるが、食塩非依存性高血圧ではNO合成酵素の活性化に異常が存在する。従来より特に腎臓においては食塩依存性高血圧で血管障害が著明であることが知られており、両者の関連性は重要な所見と考えられる。NO感受性螢光試薬の開発については候補薬を数種合成し得た。いずれもNOと特異的に反応し、NOの代謝物とは反応しない。この試薬を血管平滑筋培養細胞液中に加えておくとサイトカインによって誘導されたNO合成酵素由来のNOを経時的に観察し得た。この結果、従来の指摘より早期からNOが遊離され始めることが明らかとなった。 (2)臨床的検討 呼気中NOの測定を種々の疾患例で施行した。先ず健常者では日を変えて繰り返し測定しても再現性がよく、運動により呼気中NO排出量が約4倍に増加した。次いで肝疾患例において同様の測定を行ったところ、慢性肝炎、肝硬変においてその重症度に応じて呼気中NO排出量の増加が認められた。Child B型、Child C型肝硬変では健常者の2倍に増加していた。従来より、肝硬変患者ではhyperdynamic state、すなわち心拍出量の増加、未梢血管抵抗の減少にあると考えらえており、この原因に内因性NOの増加が関与していることを示すために、同時に心拍出量を測定した。その結果、心拍出量と呼気中NO排出量とは密接な正相関を示した。
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