有機酸代謝異常スクリーニングのための質量分析データ自動解析ソフトの開発

1996 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 07557062
• 研究機関: 島根医科大学
• 研究代表者: 山口 清次 島根医科大学, 医学部, 教授 (60144044)
• 研究分担者: 山本 孝 島津エス, デー・開発部, 専門課長 ; 木村 正彦 島根医科大学, 医学部, 助手 (00263533)
• キーワード: GC / MS / 有機酸代謝異常 / 脂肪酸代謝異常 / スクリーニング / 自動診断 / コンピュータ / プログラム

研究概要

今年度は本研究費の2年間の2年目に当たる.初年度(昨年)には、一般的に行われている溶媒抽出法による尿中有機酸分析のデータ自動解析システムを確立した.今年度はこの基本ソフトをもとにして、応用範囲を広げる研究を行った.
【方法と結果】
1)直接乾燥法による分析への応用:直接乾燥法は100uLの尿を直接エバポレートして誘導体化するものである.前処理が簡単で有機酸のみならずアミノ酸や糖類も同時に検出されるため、マススクリーニングへの応用が検討されている.この方法によるマススクリーニングに向けて、これらのアミノ酸や糖類の各化合物のメチレンユニット値やマススペクトルデータをとり、自動解析用のテーブルを作成した.またデータをクレアチニン換算する機能も加えた.
2)安定同位体希釈法への応用:安定同位体希釈法は微量物質を検出定量できるが、内部標準物質を複数設定する必要がある.アシルグリシン分析は脂肪酸代謝異常症の診断に重要であるが、微量なため通常の方法では分析が難しく、安定同位体希釈法などによる分析が必要である.今年度、基本システムに内部標準を複数設定できる機能を加えた.これにより安定同位体希釈法によるデータの自動解析が可能になった.
3)有機酸代謝異常スクリーニング:昨年作成した自動解析システムを用いて、今年度全国の医療機関から依頼された約400症例の有機酸分析を行い、XX例の先天代謝異常症を検出した.このシステムが実用的なことを確認した.
【考察】
有機酸代謝異常症の新生児マススクリーニングが最近検討されはじめている.本研究によって開発したシステムは、GC/MSや先天代謝異常に詳しい知識のない人でも使用することができ、GC/MSを応用した臨床検査、スクリーニングへの応用を容易にすると思われる.

研究成果

• [文献書誌] Imai J: "Dtermination of the 8-methyl ether of xanthurenic acid in human serum by high-performance liquid chromatography with fluorescence detection." J Chromatography. 679. 204-207 (1996)
• [文献書誌] Shigematsu Y: "Prenatal diagnosis of organic acidemias based on amniotic fluid levels of acylcarnitnies." Pediatr Res. 39. 680-684 (1996)
• [文献書誌] Itoh T: "Effect of carnitine administration on glycine metabolism in patients with isovaleric acidemia:significance of acetylcarnitine determination to estimate the proper carnitine dose." Tohoku J Exp Med. 179. 101-109 (1996)
• [文献書誌] Fukao T: "Immunotitration analysis of cytosolic acetoacetyl-coenzyme A thiolase activity in human fibroblasts." Pediatr Res. 39. 1055-1058 (1996)
• [文献書誌] 木村正彦: "GC/MSによる3-ヒドロキシイソ酪酸尿症の同定" 日本医用マススペクトル学会講演集. 21. 125-128 (1996)
• [文献書誌] 山口清次: "新しい質量分析法を組み合わせたプロピオン酸血症の出生前診断" 日本医用マススペクトル学会講演集. 21. 137-140 (1996)
• [文献書誌] 山口清次(井村裕夫編): "最新内科学体系第8巻 -II型グルタル酸血症-" 中山書店、東京, p354-356 (1995)
• [文献書誌] 山口清次(井村裕夫編): "最新内科学体系第8巻 -β-ケトチオラーゼ欠損症-" 中山書店、東京, p138-142 (1996)