研究概要 |
本研究では炎症、血栓、卵巣癌と反応するモノクローナル抗体より、遺伝子工学の手法で抗原と反応するsingle chain抗体(10数個のアミノ酸、ペプチドより成る)を解析。化学的に合成したペプチドを用いた新しい画像診断法を開発することである。 平成7,8年度は抗体から抗原との結合部位のみのアミノ酸よりなる重鎖と軽鎖を結合させたsingle chain抗体を作成。CA125抗原を発現する癌細胞との反応は確認された。しかしsingle chain抗体を放射性ヨードで標識したところ、ヨード標識抗体は不安定で、CA125抗原との結合も認められなかった。重鎖と軽鎖との結合に問題があると考えられ、さらに改善中である。 一方、抗体から抗原との結合部位をマウス抗体のまま、その他の部位をヒト型抗体としたキメラ抗体は、RI標識後も安定しており、抗体との結合が確かめられた。キメラ抗体を放射性ヨード、テクネシウム-99m標識し、CA125抗原と反応する抗体を用いて卵巣癌の画像診断を、また白血球と反応する抗NCA95抗体を用いて、骨髄の画像診断を安全に行うことができた。特にNCA95抗原に対する抗体は、血中抗原と反応せず、ヒト白血球に特異的に結合するため、悪性腫瘍の骨転移、骨髄線維症、再生不良性貧血などの骨髄機能を知るのに有用であった。
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