平成8年度では、高吸水性ポリマーの選択をまず行う計画であった。数種の材料の物性を検討し、アクリル酸ナトリウム塩重合体とアクリル酸ナトリウム塩・ビニールアルコールの共重合体が、毒性のないこと、合成が比較的容易なことから臨床的に用いることができると判断し以後の研究はこの2つの材料に絞って行った。 動物実験は実験計画の通り家兎の腎臓を用いて行っている。組織反応の研究では血管及び血管周囲の組織反応は極めて軽微であることが証明され、塞栓物質として優れた特質を有することを確認した。塞栓部位の動脈壁構造は破壊され塞栓効果は永久的なものであることが確認された。現在、粒子の大きさ、懸濁液の種類の違いによる組織変化の違いや他の塞栓材料との比較研究を行っており、この塞栓材料の優れた特質が証明されつつある。 臨床研究は腫瘍患者23例、従来の塞栓物質では治療できなかった動静脈病の患者13例に対して塞栓術を行った。腫瘍例では高吸収水ポリマーを用いた場合従来の塞栓物質では得られなかった血流抑制効果が得られ、か副作用はほとんど認められなかった。腫瘍の摘出標本も12例得られたが、組織反応は極めて軽微で、副作用による患者の訴えもなかった。 動静脈奇形の症例では、12例に症状の軽減が得られ、治療成績の向上が達成された。これらの事より本研究材料は新しい塞栓材料として有望であると結論づけ、今後の研究を継続する予定である。 高吸水性ポリマーは医療材料として有用性が高く、現在血管造影の補償フィルターを作成、基礎試験を終了し臨床的有用性を確認中である。
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