本年度はアシアロ藤蛋白レセプタータイプ1のノックアウトマウスを樹立した。相同的組換えによつて変異を導入したES細胞を卵にマイクロインジェクションして、キメラマウスを作成した。いくつかのキメラマウスからヘテロ接合体が生まれた。ヘテロ接合体同士の交配によってホモ接合体(MHL1KO)を樹立した。MHL1KOの外見は正常で、繁殖力も変化は認められなかった。肝臓の膜分画に対してイムノブロットを行ったところ、MHL1とMHL2の両方のサブユニットが完全に欠損していた。これは、MHL2KOの場合、MHL2は完全欠損していたが、MHL1は数%残存していたことを考えると興味深い現象である。放射性ヨードで標識したアシアロオロソムコイドとアシアロフェチュインの血中からの消失速度を比較して、アシアロ藤蛋白の除去能を検討した。アシアロオロソムコイドの異化はMHL1KOにおいてほとんど欠損しており、アロフェチュインの異化も遅延していた。特に、アシアロフェチュインの異化障害はMHL2KOの場合よりも強く、MHL1とMHL2の両方のサブユニットの欠損が確認されたイムノブロットの所見と合致していた。現在、血中のタンパクの糖鎖を解析中である。今後、MHL1KOを129 inbredの条件で樹立し、野性型129に移植を行い、アシアロ糖蛋白またはそのアナログであるガラクトシル-ポリリジンにライシンやジフテリア毒素の蛋白を直接結合させて投与するか、細胞自殺遺伝子としてヘルペスウィルスのチミヂンキナーゼ遺伝子を結合させて投与し、続けてガンシクロビルで処置し、チミヂンキナーゼ遺伝子を取り込んだ肝細胞の選択的な破壊を誘導する。この方法により、アシアロ糖蛋白受容体を欠損する移植肝のみを残して、アシアロ糖蛋白受容体を有する被移植肝のみを選択的に破壊し、移植肝の再生を期待する実験を予定している。
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