研究概要 |
1.ヒトサイトカイントランスジェニックSCIDマウスによるヒト造血系の再構築 chicken-βactinプロモーターを使用してヒトGM-CSF,およびIL-3トランスジェニックマウスの作製し,免疫不全マウスであるSCIDマウスと交配をおこない,ヒトGM-CSFとIL-3を発現するSCIDマウス(以下TG-SCIDと呼ぶ)を作製した.作製したTG-SCIDマウスはヒトサイトカイン(GM-CSFとIL-3)を高発現しており,ヒトMDS患者由来の白血病細胞株であるF-36Pをマウス個体内で増殖させることが可能であった.F-36Pを移植されたTG-SCIDマウスでは骨髄組織への顕著な浸潤が見られ,しかも骨髄破壊性質や中枢神経への圧迫による下半身麻痺を引き起こすことが明らかになり,MDS白血病細胞の治療モデルや白血病細胞による神経系への浸潤モデルとして有用でると思われた.また,マウスNK細胞による拒絶反応はSCIDマウスを用いたヒト造血さいぼう再構築研究において検討すべき問題の一つであり,NK細胞の低活性を持ったNOD-SCIDマウスの利用も有用な手段であろう.今後,本モデルマウスを用いて,MDS白血病細胞の骨髄神経への浸潤とそれに伴った神経障害に関する研究,または新しい治療法の開発に有用であると考えられた. 2)ミニブタおよびブタ胎児へのヒト造血幹細胞の移植 ヒト造血幹細胞による長期骨髄再建モデルを確立するため,ブタ胎児への移植によりヒト血液系の再構築を試みた.ミニブタおよびlarge white系ならびにDuroc系ブタを受胎させ,妊娠日数48日から81日までの15頭の妊娠ブタを1)開腹後経子宮的に,2)開腹したのち腹膜を開けずに,3)超音波診断装置のガイド下で開腹せずに,の3通りの方法でヒト骨髄細胞あるいは臍帯血を胎児に移植した.現在までのところ移植した15頭の妊娠ブタのうち8頭が流産,2頭が妊娠中,5頭が出産した.生まれてきた胎児が1ケ月齢に達したところで抹消血並びに骨髄細胞を採取し,単核球細胞を抗ヒトCD45抗体をはじめとする各種ヒト血球細胞表面抗原と反応する抗体で染色した.これまでのところではヒト血球細胞が1%以上になった例は認められていない.
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