Cre-loxのDNA配列特異的リコンビネーションを利用して、Cre、loxそれぞれの遺伝子を持つマウスの交配して生じる遺伝形質を解析するのが本研究の目的である。まず生体の中でCre-loxが機能するかを培養細胞で確認する。 ターゲット遺伝子に細胞破壊用のジフテリアトキシンAフラグメント遺伝子(DT-A)を、プロモーターにアストグリア特異的遺伝子(S100)の5'上流域あるいはモロニ-白血病ウイルスLTRを用いた。DT-Aの間にloxで挟まれた転写終結シグナス(ストッパー)を挿入した。モロニ-白血病ウイルスLTRに駆動される転写を、ストッパーとして酵母由来のスペーサーDNAを挿入することでほぼ100%転写を止めることができた。DT-Aは強力な細胞破壊効果を示した。Cre遺伝子の発現を内在性の遺伝子発現と区別させるために、人工ペプチドFLAGを付加したターゲット遺伝子とのコトランスフェクションによって検討した。その結果、Creによる正確な切断と挿入を確認することができた。ジーントラップ法はマウス個体での遺伝子発現とその構造、染色体の位置を同時に解析できるので、本研究に関連して新しい遺伝子のプロモーターの検索にジーントラップ法を用いた。 本研究を完結するには解決しなければならないいくつかの困難な点が明らかになった。ねらった組織・細胞を選択的して、時期特異的に破壊するために、染色体上での導入遺伝子のポジッション効果を受けないように、ケラチン18遺伝子のインスレーターを使用したが、期待程の効果は得られなかった。しかし他のインスレーターでは効果が見られている(私信)ので再度検討の必要はある。
|