研究概要 |
平成7年度は虚血モデル動物に対し、生理活性物質を投与することにより虚血傷害を受けた細胞を回復させることが可能かどうかを検討してきた。 1.実験動物モデルを作成。視神経結紮により、急激な虚血モデルをラットで作成した。 2.傷害の回復度を網膜電図(ERG)、アンモニアの測定、グルタミナーゼ活性により評価。虚血に伴いERGの減弱、アンモニアの上昇、グルタミナーゼ活性の減少が網膜で認められ、これらをマーカーとして障害の程度を評価した。 3.細胞増殖因による治療の試み。虚血モデル動物に対し、1μl(1μg/μl)の様々な細胞増殖因(NGF,IGF-I,IGF-II,b-FGF)を眼内に注入し、その救済効果をみた。NGFおよびIGF-IIが最も効果があると思われた。 4.投与方法の検討。生理食塩水に可溶化して眼内に投与された生理活性物質は、急速に眼内から消失し、その維持効果が失われると考えられている。長期作用を達成するために、リポソームによる徐放効果を検討した。徐放速度を最適化するため、リポソームの組成を変えてATPの放出速度を調べたところ、フォスファチジルコリンに対しコレステロール濃度が高いほど徐放速度が低いことが判明した。 5.脳虚血における神経栄養因子の役割。脳虚血では、新たな神経栄養因子として注目されつつあるHB-GAM(heparin-binding growth-associated molecule)が、海馬CA1細胞で遅発性神経細胞死に先だって著明に発現が減弱する事が判明した。
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