研究概要 |
胎生マウスより歯胚を取り出し,上皮と間葉を分離させて培養した.実験には胎生13日,16日といったいくつかの初期発生段階のマウス歯胚を用いた.これにより,ステージのことなる発生過程での上皮から間葉へ,間葉から上皮へシグナルを伝達する分子を同定したいと期待した.この歯胚を上皮,間葉,上皮と間葉といった組み合わせ再構成の培養を行った. 培養再構成組織を多数集め,全RNAを抽出した.さらにoligo-dT30を用いてpolyA-RNAを調製した.このpolyA-RNAを鋳型として逆転写酵素を用いcDNAを合成した.PCR法を用いた改良型サブトラクションを行い,上皮から間葉へ,間葉から上皮へシグナルを伝達する分子の候補となるcDNAを選択を行い,いくつかの陽性クローンが得られた.そのなかでもシグナルを伝達する分子の候補となるcDNAについては,DNAシークエンサーを用いて,部分塩基配列の決定を行なっており,その詳細な解析を進行している. また,歯胚の歯乳頭で発現し間葉から上皮へのシグナルとして作用していることが示唆されている肝細胞増殖因子(HGF/SF)が,すでに形成の終了した歯髄にも存在していることを見出した.すなわち,ヒト第三臼歯歯髄をサンプルとしてHGF/SF ELISA System(大塚製薬アッセイ研究所)を用いて測定したところ,ヒト歯胚の歯乳頭でのおよそ3分の1といった他の組織と比較しても著しく高い値を示し,歯髄においてもHGF/SFが産生されていることがわかった.今後,更にその産生細胞ならびに生理的役割等についても検討を加えていく予定である.
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