研究者らは黄色ブドウ球菌RN450株からトランスポゾンTn551変異により作成した自己溶解欠失株RUSAL2をもとにトランスポゾン挿入部位に138kDaの蛋白に相当する遺伝子配列があることを見出した。黄色ブドウ球菌が産生する菌体外溶菌酵素、51kDa endo-beta-N-acetylglucosaminidase(GL)、62kDA N-acetylmuramyl-L-alanine amidase(AM)のN端シークエンスから、この遺伝子は2つの酵素活性ドメインを持つ溶菌酵素前駆体、ATLであることが明らかにされた。このATLは36個のアミノ酸配列のシグナルシークエンスをもった溶菌酵素前駆体蛋白で菌体内で合成され、分泌された後、プロセッシングを受け、AMとGLになって上清中に放出されることが強く示唆された。また、菌体外のAMとGLはクラスター分散活性を有し、両者が同時に働くことで相乗作用があることが示された。またAM、GLに対する抗体を用いた免疫電顕の観察から、ATLあるいはそのプロセッシング産物が菌体表層にリング状に分布局在していることを見出した。以上のことから、これらの酸素は黄色ブドウ球菌の菌体分裂後の分離に働く酵素と考えられた。ATLの中に認められる繰り返し配列をもとに合成ペプチド(各20mer)を作成し、液体希釈法によって抗菌力を測定したがMICはすべて1mM以上であった。
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