研究概要 |
シェ-グレン症候群は慢性唾液腺炎・乾燥性角結膜炎による組織障害に始まり、やがて肺・肝・関節など多臓器の重篤な自己免疫疾患を併発し、稀に悪性リンパ腫へ移行することが知られており、この難治疾患の病因の本態の解明とそれに基ずく治療体系の確立を目的として疾患モデルマウスを用いた実験的研究を実施した。MRL/1prマウス、NFS/sldマウスを用いて、唾液腺局所におけるサイトカインIL-1β,TNF-β,IL-6,IL-10,IL-12p40の発現異常、接着分子ICAM-1,LFA-1,CD44の過剰発現および抗CD4,抗Vβ8、抗接着分子抗体(ICAM-1/LFA-1)投与による発症阻止効果を明らかにした。MRL/1prマウス自己免疫性唾液腺炎においては初期浸潤CD4^+T細胞に限って、T細胞レセプターVβ鎖に拘束性が存在することを明らかにし、自己抗原エピトープに反応するT細胞がクロナールに増殖し組織破壊に関与していることが判明した。また、疾患モデルマウスNFS/sld唾液腺炎および涙腺炎の発症に関わるエフェクター機構の解析を実施し各種サイトカインの産生異常と末梢における自己反応性T細胞の活性化機序との関連性を明らかにした。更に疾患モデルマウス血清中に存在する自己抗体と反応する唾液腺自己抗原タンパクの精製により唾液腺組織中に約120kDタンパク粗抽出標品を得た。このタンパク標品を部分精製してアミノ酸配列を決定した後、合成した抗原ペプチドに対する家兎ポリクロナール抗体を作製し、ウェスタンブロット法・免疫組織化学により臓器特異的な局在を確認することが出来た。更にアミノ酸置換による変異ペプチドを合成しin vivoの実験システムへ活用することによってシェ-グレン症候群の発症阻止を目的とした治療体系を確立し臨床応用の可能性を明らかにしたい。
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