研究概要 |
本課題について以下の各研究テーマを設定し、それぞれ研究から得られた成果の概要を示す。 1.顎関節における滑液採取法に関する検討 (1)MRIによる滑液貯留部位の検索(柴田):顎関節では閉口時には上関節腔の関節結節直下に、開口時には下顎窩内側に滑液が貯留する頻度が高い。(2)原液採取法の改良(柴田):前項の結果から、滑液採取時の穿刺部位を関節結節直下に換え、滑液原液採取の成功率を高めた。(3)外部マーカー(VB_<12>)による希釈回収法における希釈率の算出法の検討(村上、藤田):希釈回収法の希釈率算定のために、希釈液中に外部マーカーとしてVB_<12>を混和する方法の有用性を確認するとともに、問題点を明らかにした。(4)生理食塩液パンピングによるHA回収率の検討(In vitro)(柴田):分子量80万の1%ヒアルロン酸ナトリウムを生理食塩液1.0mlでパンピングし、パンピング回数が回収率に与える影響を実験的に調べたところ、1および3回と5,7および9回の間に明らかな差がみられた。 2.顎関節滑液(原液採取)中の軟骨破壊マーカーの解析 (1)C64,C4S,HAの不飽和二糖のHPLC法による解析(柴田、村上、宮崎):顎関節滑液中のC64,C4SおよびHAの測定値は変動係数が大きく、比較のためにはC6S/C4S,C4S/HA,C6S/HAなどの比が有効であり、特にC6S/C4S比ではRAとIDとの間に有意差がみられた。 3.顎関節滑液(希釈回収)中の炎症マーカーの解析 (1)IL-1,-6,-8の測定(久保田、柴田):顎関節滑液中のIL-1,-6,-8の同定。(2)MMP-2,-3,-9の測定(久保田):顎関節滑液中のMMP-2,-3,-9の同定。(3)PGE_2の測定(村上):顎関節滑液中のPGE_2濃度はVASスコアなど疼痛を表す指標と関連が認められなかった。 以上から、顎関節における微量滑液検査は、検査法としてさらに検討および改良を加えることにより、顎関節ばかりでなく他の小関節におけるRAとOAとの鑑別および早期OAの判定などに臨床応用の道が開けると思われる。
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