研究概要 |
Streptococcus mutansの主要な病原因子は,スクロースから付着性のグルカンを合成し,菌体の歯面付着に深く関わる酵素:グルコシルトランスフェラーゼ(GTase)である.本研究では,う蝕発生とGTaseの関係を明確するためにGTaseを分子生物学的手法を駆使して解析した. 供試菌として日本人小児より分離されたS.mutansMT8148株を用い,そのGTase遺伝子(gtfB,gtfC)がクローニングされた組換えプラスミドpSK6およびpSK14(Fujiwara et al.,1992)を用いた. pSK6中のgtfB遺伝子の中間にエリスロマイシン耐性遺伝子を挿入し,これをMT8148株に形質転換して染色体上のgtf遺伝子との間で相同遺伝子組み替えを起こさせ,エリスロマイシン耐性変異株を分離した.抗GTase抗血清を用いたウエスタンブロットでGTaseの発現を調べところ,GTase-Iを欠失した変異株,GTase-SIを欠失した変異株およびその両者を欠失した変異株が分離された.いずれの欠失株もう蝕発生と関わりの深いスクロース依存性付着能は低下していた. 一方pSK6とpSK14に含まれるMT8148株由来gtfB,gtfC遺伝子からサブクローンプラスミドを作成した.これをテンプレートとしてジデオキシターミネーション法を用いて,DNA塩基配列の決定を開始した.現時点までにgtfB,gtfCの両遺伝子の約5kbの塩基配列がほぼ決定された.
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