口唇口蓋裂自然発症マウス(CL/Fraserマウス自然発症率30%)を用いて胎児手術後の治癒経過を病理組織学的に検索したところ、以下のような結果を現在のところ得ることができた。 (実験方法):CL/Fraserマウス間で、1晩のみの交配を行った。妊娠が確認された母親マウスに、妊娠15日齢、16日齢、および17齢に吸入麻酔下で帝王切開を施した。子宮内の胎児マウスの顔面部を子宮外に露出させ、口部外科的閉鎖術を施し、再度子宮内にもどした。その後子宮内での成長発育を待ち、自然分娩された胎児マウスを回収した。そして、ホルマリン固定後、HE染色を行い、顕微鏡下で精査した。なお、実験群は次の3群とした。即ち口唇口蓋裂を自然発症しなかった胎児マウスで切開縫合したA群、口唇口蓋裂を自然発症した胎児マウスで縫合したB群、口唇口蓋裂を自然発症した胎児マウスで切開、縫合したC群である。今回は、A群11例、B群10例、C群11例の内、子宮内で3日以上成長した胎児マウスについて、A群では4例、B群では5例、C群では5例の病理組織学的検索を行った。 (結果):1、A群では4例中口唇裂隙部の離開が認められたのが1例、間充組織の交通が認められたのが3例であった。 2、B群では5例中4例が離開しており、1例のみ間充組織の交通が認められた。 3、C群では5例中口唇裂隙部の離開が認められたのが2例、上皮が接触していたのが1例で、間充組織の交通が認められたのが2例であった。 (まとめ):B群の結果は、Sullivan(1989)の胎児マウスは口唇の両端を縫合にて寄せあわせるだけで接着し、かつ間充組織の交通もみられたという報告と一致しなかった。またB群とC群の比較より、CL/Fraser胎児マウスは縫合のみでは20%しか治癒傾向を示しておらず、切開・縫合により60%とより高い率で治癒傾向にあった。また今後は、さらに顎顔面頭蓋形態の分析結果も随時学会発表および論文発表する。
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