歯周病原性細菌の有する新しい骨形成阻害因子の解明および臨床診断への応用

1996 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 07557137
• 応募区分: 試験
• 研究機関: 九州歯科大学
• 研究代表者: 竹原 直道 九州歯科大学, 歯学部, 教授 (00038879)
• 研究分担者: 松尾 登 九州歯科大学, 花王研究所, 主任研究員 ; 安細 敏弘 九州歯科大学, 歯学部, 講師 (80244789) ; 羽地 達次 九州歯科大学, 歯学部, 助教授 (50156379)
• キーワード: 骨形成 / 歯周病 / P.intermedia / A.actinomycetemcomitans / アルカリ性フォスファターゼ / 骨芽細胞

研究概要

我々は歯周病原性細菌の中でPrevotella intermediaとActinobacillus actinomycetemcomitansの超音波破砕抽出物にマウス頭蓋冠由来骨芽細胞(MC-3T3 E1)のアルカリ性フォスファターゼ活性を著しく阻害する病原性因子が存在することを明らかにしてきた。これらの因子は濃度依存的、経時的に骨形成を阻害し1ng/mlの低濃度でも阻害効果を示した。100℃10分の熱処理、及び3時間のトリプシン処理でこの阻害因子の活性の回復は認められなかった。このことはこの因子は蛋白質ではないことを示唆する。モルカットによりこの因子の阻害活性は分子量10万以上であること、Sephadex G-200カラムを用いたHPLCゲル濾過法でこの因子は分子量290kDa以上の分画に溶出すること、部分精製した阻害因子はSDS-PAGEで分子量約170-190kDaに相当する糖蛋白であることが判明した。ところが成人性歯周病原性細菌のP.gingivalisは100ng/mlの高濃度を用いても骨形成の阻害作用を示さなかった。さらにC.ochracea、S.milleri、S.sanguis等の口腔内細菌及びE.coliの超音波破砕抽出物、又はA.actinomycetemcomitans、大腸菌、サルモネラ菌のLPSも骨形成阻害作用を示さなかった。それらの成果の一部は現在印刷中である(Murata et al.Oral Diseases)。さらに我々はヒト骨肉腫由来のヒト骨芽細胞様細胞(SaOS-2、MG-63)を用いて検討を加え同様の成果を得た(投稿準備中)。この因子はその分子量、活性濃度、ポリミキシンBによって阻害されない等の点から破骨細胞活性化因子として既に報告されている線毛、LPS、SAM等とは異なる物質と予想される。これらの細菌から大量の因子を分離精製して、抗体を作成しさらに検討を加える予定である。

研究成果

• [文献書誌] S.Shirakawa,et al.: "Transblot Identification of Avidin-Interacting Proteins in Rat Salivary Glands" Biochemistry and Molecular Biology International. 40(1). 67-72 (1996)
• [文献書誌] S.Shirakawa,et al.: "Immunohistochemical and immunoblotting identification of protein phosphatase 11 in rat salivary glands" FEBS Letters. 393. 57-59 (1996)
• [文献書誌] T.Murata,et al.: "Extracts of Prevotella intermedia and Actinobacillus actinomyceten comitans inhibit alkaline phosphatase activity in osteoblastic…" Oral Diseases (in press).
• [文献書誌] C.Yoshioka,et al.: "Identification of the Fas antigen in human gingiva" Journal of Dental Research. 75(6). 1353-1357 (1996)
• [文献書誌] Y.Muraki,et al.: "Immunohistochemical detection of Fas antigen in oral epithelia" Oral Pathology and Medicine. 26. 57-62 (1997)
• [文献書誌] Y.Morimoto,et al.: "The protein phosphatase inhibitors Okadaic Acid and Calyculin A induce apoptosis in human osteoblastic cells" Experimental Cell Research. 230(2). 181-186 (1997)