研究概要 |
本研究では,医薬品及び食品の添加物として広く利用されているケラチン,カゼインなどの蛋白質並びにキトサン,アルギン酸などの多糖類を加水分解して得られる低分子量の蛋白質や多糖類,いわゆる低分子量の水溶性天然高分子を用いて,難水溶性医薬品の水に対する溶解性と吸収性の向上を企図する.まず,本年度はケラチンについて検討した結果,以下の知見が得られた. 1)pH8.3,50℃の条件下で1時間プロテアーゼ処理することにより,効率よく酵素的低分子化ケラチン(E-FK)を得ることができた.また,蹄角を0.4%Na_2S溶液中で40℃,15時間処理することにより,効率よく化学的低分子化ケラチン(C-FK)を得ることができた. 2)蹄角は熱処理によりケラチンのα-ヘリックス及びβ-シート構造が破壊され,その結果,酵素的に加水分解されやすく,加えて,得られた低分子化物のほとんどはランダムコイル状の二次構造をとっているものと推察された. 3)FKは芳香族アミノ酸含量が多く,アミノ酸組成の偏りは少なかった.一方,FG6600はPro,Glyの含量が多かった.このアミノ酸組成を反映して,FG6600はin vitroにおいてトリプシン及びα-キモトリプシンに対して比較的安定であったが,FKsはα-キモトリプシンにより容易に低分子化を受けた. 4)FG6600及びFKsは,アルカリ条件下で加水分解されるが,酸及び熱には安定であった.また,FG6600よりもFKsの方が加水分解されやすかった. 5)E-FKはマウス血漿,肝臓及び腎臓ホモジネートのタンパク質と結合し,肝臓及び腎臓中では低分子化された.一方,FG6600はタンパク質との結合も低分子化も観察されなかった. 6)C-FK>E-FK≧FG6600の順でマウスの血漿と結合し,この結合には血中のアルブミンとの相互作用が関与しているものと考えられた. 7)FKs及びFGsの静脈内投与及び経肺投与後の毒性は極めて低く,FKsの免疫原性は極めて低いことが明らかになった.
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