研究概要 |
1、c-myc遺伝子上のDNA複製開始領域を認識するタンパク質群 c-myc遺伝子上のDNA複製開始領域の必須配列,(H-P) core,にはMSSPと名付けたタンパク質群が結合し、そのスプライシングの違いによるMSSP-1-3, Scr2を既にcDNAクローニングした。MSSPはC-MYCのN末に結合し、複製活性を増強した。また、この(H-P)core plus鎖にはC-MYCそのものが結合することも判明した。更に、MSSP/C-MYC複合体はDNAポリメラーゼαと結合することがin vivo, in vitro系で明らかにした。DNAポリメラーゼαとMSSP-1が直接結合し、そこにC-MYCが結合する形となる。MSSP/C-MYC複合体はDNAポリメラーゼαのCと呼ばれるN末付近に結合した。この領域はSV40DNA複製開始においてSV40T抗原が結合する領域でありMSSP/C-MYC複合体とT抗原との機能的類似性が示唆された。また、MSSPは細胞周期のGl/S移行に主役をなすcdkとも複合体形成した。cdk2はGl/S移行に加え、S期開始即ちDNA複製開始に直接関与していることが最近明らかにされている。また、本研究の中で、MSSPはPCNAと、C-MYCはcdk2インヒビターであるp21と直接結合することも判明した。また、p21はcdk2、PCNAとそれぞれN末、C末で結合することが知られており、C-MYCはp21のC末でPCNAと拮抗的に結合した。以上を総合して考えると、C-MYC/MSSP複合体はGl/S境界領域ではcdk2/p21複合体に結合することでcdk2を活性化させS期開始のシグナルをあたえ、次にDNAポリメラーゼαがMSSP sideに結合し、実際の複製開始が起きる。次に、p21/C-MYC複合体にPCNAが参入し、C-MYCと拮抗的に作用してPCNA/p210cdk2複合体が形成され、そのPCNAにDNAポリメラーゼδが結合することで更なる複製が進むと考えられる。
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