研究課題
基盤研究(A)
分裂酵母はm大腸菌に比較して遺伝の構造や機能が動物細胞に類似し、動物細胞の発現ベクターの適用が可能である。また分裂酵母は、小胞体が発達している点でP450の様な膜タンパクの発現に適していると考え以下の実験を行った。本研究ではヒト薬物代謝活性のin vitro評価系の開発の一貫として、ヒトCYP2Cサブファミリーに属する分子種を対象に、分裂酵母を宿主に用いて、P450/P450reductase共発現株を樹立した。当初、我々は種々のP450単独発現酵母株を作裂してきた。しかしながら酵母細胞中では、薬物代謝反応の電子伝達系に必要なP450ーreductase活性が極めて低く、分裂酵母発現P450の活性測定系を再構成するためには、反応系に新たにP450reductaseを加えなければならなかった。また、外から添加した精製P450ーreductaseが、効率的に機能するとは限らない。これらのことから酵母を宿主としたP450/P450ーreductase共発現系の構築を行った。我々は、安定に高発現する株を得るため、P450 reductase cDNAを酵母染色体へ導入し恒常的に一定のP450 reductaseを発現させ、この株の細胞内に新たにP450 cDNAをプラスミドの形で導入する方法を採用した。P450 reductaseを染色体に組み込んだ分裂酵母のRS10株及びそのP450導入株は、培養条件等が変化してもそのミクロソーム中のP450 reductase含量はほとんど一定の値(20-54pmol/mg protein)を示した。この結果は、プラスミド型発現ベクターで導入したP450の含量が、同一の株であっても培養条件等により0.002-14020-54pmol/mg proteinと変動が大きいこと、培養を経る度にP450 reductase含量が減少していった不安定性を示したのと好対応であった。これらの結果は、本実験系が医薬品の薬効及び安全性の予測に有効な手法となることを示している。現在、CYP2ファミリー以外の分子種についても構築を行っており、これらが完成した時にはヒト肝の代用システムとして利用可能と考えている。
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