細胞移植は、臓器移植と共に医学的な検討が進められるべき分野の一つであるが、標的臓器あるいは腫瘍組織へのターゲッティングが共通の課題である。糖鎖を認識するタンパク質(レクチン)と糖鎖リガンドとの特異的接着現象が細胞のターゲッティングに重要な役割を演じていることがわかってきた。本研究では、抗腫瘍性マクロファージ上に発現が認められる細胞膜貫通型のカルシウム型レクチンMMGLを糖鎖認識デバイスとして活用し、細胞を腫瘍局所に人為的にターゲッティングする方法および結果の解析法の開発を目指した。MMGLをトランスフェクトしたマウスT細胞株CTLL-2細胞のマウス卵巣癌細胞OV2944-HM-1の肺転移結節への移行性を調べる実験系を平成7年度に確立したが、その改良を試み以下の結果を得た。 1.データーの定量的解析のため、画像解析装置ARGUS-50あるいは共焦点顕微鏡を用いて、細胞の位置の同定および面積測定など画像解析を試みた。特に共焦点顕微鏡が有効で、2種類の蛍光標識により癌細胞MMGL発現細胞の位置が癌転移の極めて初期の段階において同時に検出可能となった。発達した腫瘍転移結節の面積測定には低倍率の観察が必要であるが、トランスフェクタントの位置の同定にはむしろ高倍率が必要であるという今後の問題点がある。 2.細胞質内の配列で分子の取り込みに関わるモチーフを改変し、Down Regulationを防止して効率良く糖鎖認識デバイスを細胞表面には配置することを試みた。細胞質内のYENL配列をAENLに改変した分子をコードするようにMMGLのcDNAを改変し、恒常的なトランスフェクタントCTL-YMを得た。モノクローナル抗体LOM-14を用いて、MMGLの細胞表面での発現を証明した。 3.CTL-MLとCTL-YMを蛍光標識後、肺転移結節を持つマウスに移入し腫瘍部位への移行性を比較したが、現在のところ顕著な違いを認めていない。
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