アルツハイマー病は記憶や学習など高次機能に重要な脳領域のニューロンが早期に変性し、大量に死滅する疾患であり、病変は海馬や大脳など学習や記憶に重要な役割を果たす領域に顕著に現れる。アルツハイマー病の病変が顕著に現れる脳の領域では、神経細胞の情報が活発に行われ、タンパク質リン酸化酵素活性が高いことが知られている。プロテインキナーゼおよびプロテインフォスファターゼの活性調節、あるいは、機能異常が重なって病気の発症につながる可能性が考えられている。本年度は、アルツハイマー病で異常なリン酸化をうけているタウタンパクのcDNA導入細胞の確立し、アルツハイマー病の解析に適した細胞を確立することを目的に研究をすすめた。申請者は前年度にプロテインキナーゼを過剰に発現する細胞のクローン化に成功しているので、タウcDNAの発現ベクターを構築し、プロテインキナーゼを過剰発現する培養神経芽細胞に導入し、タウcDNA導入細胞をクローン化を行った。現在、タウを過剰に発現する細胞株を選択しているところである。一方、胚性ガン細胞由来のP19細胞では、神経分化にともない、プロテインキナーゼ活性が誘導される、未分化細胞の10倍にも増加することを見い出したので、P19細胞にもタウcDNAを導入し、タウを過剰に発現する細胞を選択しているところである。細胞がクローン化できれば、タウのリン酸化を解析し、どのような条件で、リン酸化が増大するか、また、どのような条件でリン酸化を抑制することができるか解析することが可能になると思われる。
|