研究分担者 |
緒方 嘉貴 テルモ(株), 研究開発センター, 研究員
内山 英樹 テルモ(株), 研究開発センター, 専門研究員
島田 隆 日本医科大学, 教授 (20125074)
遠藤 文夫 熊本大学, 医学部・附属病院, 講師 (00176801)
山本 哲郎 熊本大学, 医学部, 教授 (60112405)
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研究概要 |
1.表面修飾剤を含む多重膜リポソームTRXシリーズを3種類開発した。このカチオニックリポソームを遺伝子導入ベクターとして使用した場合の有用性を用いた免疫染色、酵素活性測定などにより遺伝子導入効率を確かめた。まず、Cosl,HepG2,LECラット肝細胞由来などを用いたex vivo studyを行った。導入遺伝子はβガラクトシダーゼ,オルニチントランスカルバミラーゼ(OTC),ウイルソン病遺伝子である。TRXシリーズは従来の市販のものに比して3〜10倍の高い導入効率が得られた。とくに血清存在下で、さらに導入効率が上昇した。これはリポフェクチンと大きく異なるところでin vivoでの研究に有用であることが示された。但し、アデノウイルスをベクターとして遺伝子導入効率と比較するとかなり低い値を示した。現在AAVベクターも開発中であり、これとの比較を目指している。 2.in vivoの研究としては疾患モデル動物を2種(OTC欠損症;SpfAsh,ウイルソン病LECラット)を用いてTRXシリーズリポソームの遺伝子導入効率を検討し、併せて臓器組織も検討した。静脈内投与では血管内皮,肝クッパー細胞には遺伝子発現されたが、肝組織には発現は見られなかった。肝臓に直接注射した実験では、肝細胞の一部に発現が見られた。このことは表面修飾のさらなる改良(例えば肝表面レセプター抗体などの使用)を加えることや、経門脈投与などでより良い効果が期待できる。 3.アデノウイルスベクターを用いた場合には極めて高い遺伝子発現率が得られたが、一過性でありしかも再投与が無効であった。ウイルスベクターを用いた肝組織への遺伝子導入としてはAAV(アデノアソシエイテドウイルス)ベクターが有望であり、CAGプロモーター、OTCcDNAを組み込んだものを作成し、検討に入った。 4.ベクターの開発がまだ十分でなく、遺伝子治療システム全体の検討にまで研究が及ばなかったことは残念である。
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