研究概要 |
本年度の実施計画に記載した以下の2点について研究を実施した。 (1)GAP-43/LacZトランスジェニック GAP-43のプロモーターの下流にGAP-43のN末アミノ酸とLacZの融合蛋白を結合させた遺伝子を用いトランスジェニック動物を作成していたが,ようやくトランスジェニックマウスが生まれた。現在ホモのライン化を行っている。本トランスジェニックマウスの発生過程におけLacZの発現を検討したところ,極めて神経特異的に発現が見られた。さらに,E12.5のマウスなどでは三叉神経をはじめ伸展途上の神経の先端(成長円錐)にもLacZの発現が認められた。このような胎生期の発現は極めてネイティブなGAP-43に近いと考えられる。通常の成熟動物においてもGAP-43の発現と同様に極めて視神経に豊富に発現が認められた。さらに,大脳皮質などにも発現が観察された。現在神経損傷を与えて発現動態がGAP-43とどの程度類似しているかを検討している。(本研究結果はアメリカ,ニューオリンズで行われた第26回北米神経科学会で発表した。) (2)アデノウイルスを用いた遺伝子導入 アデノウイルスによる発現系の構築を行った。現在神経再生に関連があると考えられ低るRasの発現抑制を試みるために,RasのドミナントネガティブやRasを抑制するRas-GAP1mをアデノウイルスに組み込んだ.さらにRasのドミナントポジティブや下流のMEK1についてもアデノウイルスの作成を行った.現在これらのウイルスを用いて,舌下神経損傷後の損傷運動神経細胞に選択的に遺伝子導入を図っている.本方法の開発により,発生工学的な手法と併用することによってさらに応用範囲が広がることが期待される。
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