本年度は組合せが完了した小動物用の運動時体熱出納測定システムの信頼性チェックおよび不良箇所の改良のため、システム単独での試運転と動物を用いての運転を行った。また、これらシステムの開発研究と並行して、運動鍛練動物に関する予備的実験を行った。以下にそれぞれの概要を記す。 1.単独での試運転 試運転の初期段階では空気ポンプを熱量計の後に置く空気供給方式を採用したが、熱量計内圧がかなり強い陰圧になり、空気洩れなどの不具合が生じ易かった。この解決のため、熱量計の送気側と排気側にそれぞれ同じポンプを置く方式を採用した。この結果、数日の連続運転によっても空気流量や直接熱量計からの出力が安定した。 2.動物を用いての試運転 ラットの深部体温と自発行動量をテレメトリーシステムを用いて48時間以上測定した。自発行動量の測定にはなんら問題はなかったが、しばしば深部体温が測定出来なくなった。これはラット体内の送信機とアンテナとの位置関係を変更することで改善をみた。 3.動物実験の成績 以下の3テーマにつき実験を行い、それぞれの結果を得た。 1)運動鍛練によるラット深部体温の日内変動パターンの変化:ラットの輪回し行動を一日の内一定時間帯に限定し、この運動様式に馴化させると、かつての運動時間帯に一致して深部体温が上昇することが判明した。 2)運動鍛練によるラット体温調節反応発現閾値温の移動:自発輪回し行動による運動鍛練によりラットの深部体温と体温調節反応発現閾値温が上昇することが示唆された。 3)運動鍛練によるラット体温調節反応強度の変化:自発的輪回し運動による運動鍛練動物では体内からの温熱負荷に対する熱放散反応が亢進したが、環境温上昇に対する体温調節反応は逆に減弱する可能性が示唆された。
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