本研究は、高等脊椎動物の概日リズムの分子機構を明らかにするために、マウスを用いて概日リズムの突然変異を分離することを目的としている。本年度は、過去2年間の研究により発見した幾つかの突然変異マウスの概日リズムを、遺伝学的ならびに行動学的に検討した。既存系統の中から発見したリズム異常マウスであるCSは、周期が24時間より長く、恒常暗でリズム分割を起こす。この系統と、正常リズムを示すC57BLマウスを使って、周期に影響する遺伝子をQTL(Quantitative trait locus)法によりマッピングした。その結果、第5染色体(LOD=3.5)、第12染色体(LOD=3.4)、第19染色体(LOD=3.7)においてQTLの存在が示唆された。さらにこれを確認するために、CSとMSMマウスの交配より得たF2固体についてこれらの領域を調べたところ、第19染色体上の同じ染色体領域で高いLOD値(LOD=4.2)が得られた。以上の結果から、CSマウスの周期に影響する遺伝子は複数存在し、特に、第19染色体上の遺伝子が周期延長に強く関与していることが示唆された。また、野生キャスタネウスマウスから分離した無周期突然変異マウスの遺伝ならびに行動解析の結果、リズム消失は劣性形質として遺伝するが、周期に関しては反優勢の特徴を持つことが明らかになった。最後に、マウス交配過程で偶然8時間周期を示すマウスを発見したが、これについては、今後の研究のために系統育成に力を注いだ。
|