直線加速度負荷実験における仮想体験装置応用の視覚刺激装置の開発

1997 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 07557188
• 研究機関: 藤田保健衛生大学
• 研究代表者: 渡邉 悟 藤田保健衛生大学, 衛生学部, 教授 (00021361)
• 研究分担者: 深井 克明 島津製作所, 航空機器事業部, 主任研究員 ; 長岡 俊治 宇宙開発事業団, 主任開発部員 ; 羽柴 基之 名古屋市立大学, 医学部, 講師 (20180820) ; 高林 彰 藤田保健衛生大学, 衛生学部, 教授 (00126872) ; 森 滋夫 名古屋大学, 環境医学研究所, 教授 (00023656)
• キーワード: バーチャルリアリティ / 空間識 / 視運動刺激 / 立位姿勢 / 体動揺 / 下肢筋活動 / ヘッドマウンテッドディスプレー / 自己運動感覚

研究概要

平成8年度で未だ不十分な仕様であったCGを完成させ、virtual realityCGによる視覚刺激を用いて誘発される自己運動感覚vectionとそれによって生じる姿勢変化に関する研究を行った。被験者は立位姿勢でゴ-グル(島津製作所と渡邉の共同開発)を着用し、これにCGを投影し三次元表示のランダムドットパターンを提示した。ランダムドットパターンは左右方向、上下方向及び深さ方向の3方向がテストされたがこのうち最も大きなvectionを生じるのは深さ方向(radial display)であることが確かめられた。本年度はradial displayにて実験を行った。刺激は周波数及び深さ方向の振幅をパラメータとして変化させ、これに固視点の有無の効果、さらにvectionが高次神経活動によることを鑑み、暗算負荷の効果等が調べられた。結果として(1)視覚刺激はパターンが顔に向かって来るとvectionは体が前から後ろに押される感覚が起こり身体は後ろに傾く。パターンが遠ざかると逆にvectionは前に引かれ体は前に傾く。この体の動きは頭が一番大きく、躯幹、大腿、下腿の順に小さくなる。(2)vectionの大きさを口頭ないしはジョイステイックによる応答により表現すると、視覚刺激によって生じる体の揺れの大きさはvectionの大きさとほぼ比例関係を認めた。(3)刺激速度(周波数一定で振幅を変化)と体の動きの大きさとの関係は、頭の動きについてはっきりとした相関を認めるが、その他の部分は明らかな相関を認められない。(4)暗算負荷はvectionそのものを減少させる効果があり、体の動きも減少した。このようなvectionの成因は周辺視における広い視野の運動の感覚が自分自身の運動と間違えることにあるとされている。この運動感覚は感覚に応じた身体運動を引き起こす。本研究ではまず仮想体験の3次元の運動感覚を模擬しその効果を身体動揺によって表現することにある。更に、視覚系と体の動きによって生じる前庭系との関わり方、前庭刺激と視覚との相互間系等について解析しようとしている。

研究成果

• [文献書誌] KAWAKAMI Osamu: "Control of upright standing posture during low-frequency linear oscillation." Neuroscience Research. 29(in press). (1998)
• [文献書誌] HASHIBA Motoyuki: "Effects of head orientation on eye movements induced by linear acceleration under imagenary instruction." J.J.Aerospace Env.Med.34(in press). (1997)
• [文献書誌] WATANABE Satoru: "Postural readjustment response to horizontal linear acceleration." IAF/IAA97-G.I.PII.07. 1-4 (1997)
• [文献書誌] 川上 治: "立体姿勢に対する直線加速度負荷の効果" 環研年報. 48. 23-26 (1997)
• [文献書誌] SUZUKI Hiroyuki: "Effects of static body tilt on horizontal optokinetic nystagmus and after-nystagmus induced by ramp optokinetic stimulation." J.J.Aerospace Env.Med.33. 255-264 (1996)
• [文献書誌] WATANABE Satoru: "Attributes of telescience and telemedicine" 20ISTS. 96-1-10. 1-5 (1996)
• [文献書誌] HASHUIBA Motoyuki: "Non-visually induced smooth pursuit eye movements using sinusoidal target motion" Acta Otolaryngologica. 525. 158-162 (1996)
• [文献書誌] HASHIBA Motoyuki: "Influence of superimposed optokinetic stimulus on smooth pursuit eye movement elicited by sinusoidal spot target oscillation" Acta Otolaryngologica. 525. 167-171 (1996)
• [文献書誌] KAWAKAMI Osamu: "The effects of linear acceleration on upright standing" Environmental Medicine. 40. 193-196 (1996)
• [文献書誌] WATANABE Satoru: "The effect of lateral linear acceleration on horizontal optokinetic nystagmus generation" Environmental Medicne. 39. 73-76 (1995)
• [文献書誌] ICHIKAWA Masumi: "Effects of fixed point on postural readjustments caused by a moving visual scene" Environmental Medicine. 39. 145-148 (1995)
• [文献書誌] WATANABE Satoru: "Telescience testbed experiments for biomedical studies:Fertirization potential recording of amphibian eggs using tele-manipulation under stereoscopic vision" Acta Astronautica. 33. 189-194 (1994)