研究概要 |
運動時には呼吸・循環系はもとより体液調節,体温調節などのあらゆるホメオスタシス系が、筋活動の円滑な遂行のために有機的に働く.運動時のホメオスタシス調節には筋・関節の動きや、筋活動によって生ずる代謝産物を検出して呼吸・循環機能等を賦活させる末梢からのfeedback系と、運動の意志発動と同時に(あるいは先行して)自律系に上位脳から指令が発せられるfeedforward系の2つがある.このfeedback系は決して末梢だけで機能しているのではなくその調節に中枢神経系は大きく関与している.しかし末梢からの情報がどのように中枢神経系内で処理されるかについての知見は乏しい.本研究の目的はこのよう運動時のホメオスタシス調節の脳内機構の解明のための実験系を確立することである.本年度は特に最近実用化が急速に進んだテレメータによって血圧・体温等の自律反応、バイオセンサーやマイクロダイアリシスで測定した脳内物質濃度を記録するシステムを開発する.初年度は実験条件の確立とラットの運動計測システムの完成を目標に実験を進めた.実験はWister系雄ラットを用い、直径40cmの金属グリッドからなる回転かごで実験を行った.音を条件刺激として、ラットが一定角度かごを回転させると、かごに通電されるショックが回避できる装置を製作した.2年度はこの装置内に血圧、筋電図測定用のテレメータを埋め込んだラットを入れ、運動と筋電図、血圧の記録が出来るようなソフトを開発した.最終年度は以上の装置でラットが運動する実験条件を検討した.この条件をラットは3回程度のセッションで学習し、条件刺激提示により、実験者が自由に運動させることが出来るようになった.当初の目的を十分達成しているシステムを開発することが出来た.
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