研究概要 |
マウス脳CaMキナーゼIIαサブユニット(CaMキナーゼIIα)のcDNAを,動物細胞の発現ベクター(pCAGGSneo)に組み込み,PC12細胞に,電気パルス法で強制導入した。ネオマイシンを含む培地で継代培養し,CaMキナーゼII活性が上昇した複数の安定クローン細胞を確立した。CaMキナーゼIIのcDNAを持たないベクターを強制導入したMock細胞を対照細胞とした。1)CaMキナーゼIIα,β,γ,δ4種類のサブユニットcDNAを用いたノーザンブロット法により,PC12細胞に存在する約52kDaの内在性CaMキナーゼIIは,γとδサブユニットであることが明らかになった。2)安定クローン細胞では,ノーザンブロット法およびイムノブロット法により,CaMキナーゼII活性に応じたCaMキナーゼIIαの発現が確認された。3)細胞を[^<32>P]正燐酸でラベルし,Ca^<2+>イオノフォアであるイオノマイシンで刺激した後,0.1%トリトンX-100を含むRIPA緩衝液でホモジナイズし,免疫沈降法にてCaMキナーゼII自己燐酸化反応を検討した。イオノマイシン2μM,5分間の刺激により内在性CaMキナーゼIIと過剰発現したCaMキナーゼIIαの自己燐酸化反応が増強した。4)いずれの細胞でもCa^<2+>/カルモデュリン非依存性活性が,イオノマイシン刺激によって約4倍上昇した。このことは,発現したCaMキナーゼIIが,細胞質内Ca^<2+>濃度の上昇により内在性CaMキナーゼIIと同様に活性化されることを示している。5)安定クローン細胞を用いて,ジブチリルcAMP(dbcAMP)刺激による神経突起伸展反応について検討した。いずれの細胞もdbcAMPを加えないときは,神経突起伸展をほとんど認めなかった。1mM dbcAMP投与後24時間において,CaMキナーゼIIαを発現した細胞では,CaMキナーゼII活性に依存して神経突起伸展反応が抑制された。
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