研究概要 |
受容体,酵素,イオンチャネルなどの機能蛋白質のcDNAを確立した細胞系に導入して発現させ,細胞モデルを作製することで,薬物開発の有用なシステムを作り出すことができる。これらの細胞系は,薬物の効果判定や創薬に役立てることができよう。 本研究では,ラット脳CaMキナーゼIIα,β,γ,δサブユニットのcDNAをそれぞれ特異的な合成プライマーからPCRの方法に基づき作製した。動物細胞の発現ベクター(pCAGGSneo)に組み込み,電気パルス法あるいはリポフェクタミン法を用いてPC12細胞,NG108-15細胞に強制導入した。CaMキナーゼIIcDNAを持たないベクターを強制導入したMock細胞および野生細胞を対照細胞とした。1)CaMキナーゼIIα,β,γ,δ発現ベクターをNG108-15に強制導入し,クローニングすることで,それぞれのサブユニットを発現する安定細胞を得た。2)それぞれのCaMキナーゼIIサブユニットを発現させた細胞で酵素活性を細胞上清分画,顆粒分画で測定すると,その比が異なり,細胞内分画での発現に差があることを示唆している。3)PC12細胞にCaMキナーゼIIαを発現させ,安定細胞を得た。Ca^<2+>イオノフォアであるイオノマイシンを作用させ,MAP2燐酸化反応を対照細胞と比較して調べた。a)高濃度イオノマイシン投与による刺激では,MAP2燐酸化反応が上昇した。自己燐酸化反応の増強も認められた。b)低濃度イオノマイシン投与による刺激では,MAP2燐酸化反応が対照細胞に比較して減少していた。このことは,細胞内Ca^<2+>濃度上昇によりカルシニューリン活性化反応を示唆した。事実,カルシニューリンの存在をイムノブロット,ノーザンブロットにより確認した。これらの結果は,蛋白質燐酸化反応,が細胞内でプロテインキナーゼとプロテインホスファターゼの作用の総和として発現していることを示している。
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