研究概要 |
Ca^<2+>/カルモデュリン依存性プロテインキナーゼII(CaMキナーゼII)は全身の組織に分布し,Ca^<2+>を介する細胞機能に関与していることが知られている。本研究では,Ca^<2+>シグナリングの担い手であるCaMキナーゼIIアイソフォームcDNAを得,確立した細胞系に過剰発現させ,その挙動を調べた。1)CaMキナーゼIIα,β,γ,δcDNAのプライマーを作製してPCR法によって得た。得られたcDNAをプローブとして検索するとそれぞれのcDNAは,各サブユニットmRNAのみを認識し,特異的であった。2)各cDNAを発現ベクターに組み込み,リポフェクタミン法によってNG108-15細胞に発現させた。蛋白質レベルでの発現は良好であった。3)δサブユニットC末端部16アミノ酸ペプチドにヘモシアニンを結合させ,家兎に注射してポリクローン抗体を作製した。得られた抗体はサブユニットアイソフォームの中でδサブユニットのみ認識し,組織抽出液の中でもCaMキナーゼIIδサブユニットのみ認識した。4)イムノブロットによる解析,免疫組織化学法による結果から,ラット小脳にはδサブユニットが豊富に存在することが明らかになった。δサブユニットに対するプライマーを作製し,PCR法にてcDNAを得た。シークエンサーを用いて塩基配列を調べると,δ1,δ2,δ3,δ4であった。δ3の配列は,すでに心臓に存在の知られていたδ3そのものと,これまで報告のないδ3.1,δ3.4の2種のcDNAであることがわかった。命名どおりに,δ3.1はδ3variableドメインに続き,δ1variableドメインが結合していた。δ3.4はδ3variableドメインに続き,δ4variableドメインが結合していた。δ3アイソフォームはいずれも核移行シグナルを持っている。核移行シグナルと核移行シグナルに続く塩基配列がδアイソフォームの核内発現にどのような影響を持っているか検索している。また,発現細胞を用いてCaMキナーゼIIの機能的役割を調べている。
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