研究概要 |
多包虫感染によるエキノコックス症の早期発見例では、肝部分切除術によって完治するようになったが、進行例では手術不能例が多い。終宿主であるキツネやイヌの腸管に寄生する成虫には駆虫剤が有効であるが、中間宿主であるヒト、ブタには有効な薬剤はまだ無い。本症に対する免疫療法を考える前に、本症での免疫状態についてほとんど研究されていないといっても過言ではない。粗虫体抗原に対する液性抗体検索はスクリーニングとして行われているが、液性抗体が多包虫の防御抗体であるという報告は無い。寄生虫感染では、より細胞性免疫が重要であるとされ、しかもTh2タイプによる防御である例の報告が多い。 1,エキノコックス症患者の肝病巣周辺の正常部分にはIFN-γのレベルが病巣部位に比較して有意に高く、多包虫幼虫に対しては宿主のTh1タイプ反応で対応していると考えられた。 2,逆に、TNFαやIL-6は病巣部に高く検出された。 これらサイトカインのmRNAをRT-PCRによって検索した。6例中3例の患者の肝臓の正常部分にIFN-γmRNAを検出したが、6例全例の病巣部からは検出されなかった。問題はELISAによるIFN-γの値と必ずしも一致しない点である。肝抽出液を用いた測定系の再検討を迫られている。 4,他疾患での切除肝について、対照として検索した。7例全例の肝抽出液にIFN-γmRNAは検出されなかったが、3と同じ問題が残った。 5,今後、測定系を解決し、Th1細胞のクロナリテイーを検索し、抗原特異的免疫療法の可能性、BRMを用いた非特異的療法について検討する。
|