研究概要 |
日本住血吸虫のゲノム解析のための技術開発として、(1)染色体顕微切断法は(2)PCR in situハイブリダイゼーション法(PRINS)の導入を試みた。(1)染色体顕微切断法:これは、視覚的に捉えた染色体特定部位を顕微鏡下で物理的に掻き取った染色体断片のDNAを、PCR増幅後、蛍光in situハイブリダイゼーション法(FISH)で産物の特性を解析する方法である。これを、(i)日本住血吸虫および(ii)中間宿主貝の染色体に適用した。両生物とも平均200-800塩基対のDNAが回収でき、下記のようにPCR産物の細胞学的な確認が行われた。(i)日本住血吸虫の第1染色体の短腕・長腕、第2染色体全体(SJ2)、ZW染色体のDNAを回収し、FISH解析を行った。第2染色体全体SJ2の産物だけが全染色体のテロメア領域にハイブリダイズした。(ii)ロベルトシエラ貝の染色体標本からY染色体と第1染色体を、宮入貝の第1、第2染色体からそれぞれDNAを回収した。FISH解析ではPCR産物の半分が全染色体に強いシグナルを示した。(2)PRINS法:これは、特定DNAのプライマーを用いて染色体上でPCR増幅し、その鋳型DNAの物理的位置を決定する方法である。今回は、ヒトのテロメア配列(TTAGGG)7をプライマーとして、住血吸虫4種、Schistosoma mansoni(SM),S.haematobium(SH),S.japonicum(SJ),S.sinensium(SS)のテロメア配列の物理的位置を検出した。その局在性から、4種は以下の3タイプ(a,b,c)に類別された:(a)SJ,SS:全末端;(b)SM:全末端とセントロメア、W染色体のヘテロクロマチン(c)SH:全末端とW染色体のヘテロクロマチン。 以上のように、今回一応の技術が確立したことで、今後両方法とも住血吸虫および宿主貝のゲノム解析の有効な手段になると思われる。
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