前年度培養系において、熱帯熱マラリア原虫(Plasmodium falciparum)の放射線感受性について検討した。本年度は先ず、マウスを使用して、実際にin vivoにおいて輸血に際して、輸血血液の放射線照射によって赤血球に感染したマラリア原虫を不活性化出来るか否かを検討した。C57BL/6マウスに適当量のPlasmodium chabaudi感染赤血球を輸血すると、輸血後7-9日後に赤血球のマラリア原虫感染率が第一のピークとなるマラリア原虫血症を呈する。続いて、一旦赤血球の原虫感染率は低下するが、再び赤血球の原虫感染率は上昇し、15日目に第二のピークを形成し、その後治癒に向かう。マウスへの輸血前に、マラリア感染赤血球を種々の量の放射線照射を行い、輸血後の感染赤血球の割合を追跡した。その結果、10Gyの照射では赤血球の原虫感染率は低下はするが完全に防ぐことは出来なかった。しかし、原虫感染赤血球をあらかじめ50Gyの放射線照射することによって、輸血による感染を完全に防ぐことが出来た。 また、マラリア原虫(Plasmodium falciparum)感染赤血球に新しく発現してくる、宿主接着分子と結合するリガンドの解析を通して、脳マラリアの防御法を模索するために、Plasmodium falciparum感染赤血球の宿主(ヒト)種々接着分子に結合する動態を解析する系を開発した。
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