研究課題/領域番号 |
07557214
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研究種目 |
基盤研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 展開研究 |
研究分野 |
ウイルス学
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
白木 和子 東京大学, 医科研究所, 助手 (40012744)
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研究分担者 |
寺田 英司 北里大学, 理学部, 助教授 (10113440)
米川 博通 東京都臨床医学総合研究所, 実験動物研究部門, 室長 (30142110)
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研究期間 (年度) |
1995 – 1997
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キーワード | トランスジェニックマウス / ポリオウイルス受容体遺伝子 / 組織特異的発現 / 動物モデル / IRES |
研究概要 |
ポリオウイルスとは、ヒトとサルのみに感染し、小児マヒ症状を引き起こす。したがって、ポリオウイルスの病原性研究、および経口生ポリオワクチンの安全性試験には、サルが使用されてきた。しかしながら、サルを感染モデルとして使用することは、数多くの困難さが伴う。そこで,ポリオウイルスの種特異性を決定しているポリオウイルス受容体(PVR)遺伝子を持つトランスジェニック(Tg)マウスが開発された。このTgマウスは、ポリオウイルス受容性を示し、サルに代わる感染モデルとして使用することが可能である。 しかしながら、Tgマウス固体内でのPVRの臓器発現パターンは、ヒト体内でのパターンと異なっていた。たとえば、小腸や肝臓でのPRV発現は、ヒトでは十分に観測されるが、Tgマウスでは検出が困難であった。実際に、Tgマウスは、経口感染に対し、抵抗性を示した。そこで、ヒト体内でのPRVの分布によく似た分布を示すマウスPVRホモログ(MPH)の遺伝子から発現調節領域を含むと思われるマウスDNAを単離し、これをヒトPVR構造遺伝子に結合させ、このキメラ遺伝子をトランスジーンとして新たなTgマウス(MTgマウス)を作成した。 この新しいTgマウス体内でのPVR発現パターンは、ヒト体内でのPVR発現パターンにより近いことが明らかとなった。すなわち、小腸や肝臓におけるPVR発現が検出できるようになった。そこで、MTgマウスに対し、ポリオウイルスの経口感染を行ったが、これまでのTgマウスとの感受性の差は観察できなかった。この理由は現在のところ明らかでないが、ヒト型のTgマウス作成は、このように不成功に終わった。 次に肝臓にポリオウイルスを直接接種し、ウイルス増殖を観察した。その結果、MTgマウスの肝臓では、これまでのTgマウスとは異なり、ポリオウイルスの増殖が認められた。このように、MTgマウスは、中枢神経系および肝臓でポリオウイルス増殖が見られる世界唯一のTgマウスである。この新しいTgマウスを使用して、IRESとウイルスの組織特異性の関連を明らかにすることが可能であると考えている。
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