研究概要 |
労働現場において暴露される有害物質の暴露評価に生物学的モニタリングの手法が導入され世界的な関心を呼んでいる.わが国では,平成元年に「有機溶剤中毒予防規則(有機則)」の抜本的改正がなされ,トルエン,キシレンを含む計8種の有機溶剤取り扱い作業者に対して当該尿中代謝物の測定が義務づけられている.ところが,最近の調査では,「有機則」に該当しない溶剤の使用が見られる.例えば,有田焼等の陶磁器関連のプリント作業では,現在の「有機則」に該当しない溶剤,具体的にはトリメチルベンゼン等が使用されており,これらは法的規制を受けないため,使用労働者の健康への影響が懸念される.そこで本年度は先ず,有機溶剤としてトリメチルベンゼン(TMB)を主に取り扱う労働現場の作業環境の実態調査を行い,TMBの作業環境濃度の把握と作業者の個人暴露量の実態を調べた.次に,TMBの尿中代謝物として,どの様なものが有用であるかを文献的に調べた.その結果,TMBの異性体の内で特に含量の多い1,2,4TMBの主たる尿中代謝物は3,4-ジメチル馬尿酸(34DMHA)であることが分かったので,この尿中代謝物のHPLCによる測定法の開発に取り組むと共に,溶剤取り扱い作業者における1,2,4TMB暴露量と尿中代謝物である3,4DMHA排泄量との間の量一反応関係の解明に向けた研究に精力的に取り組んでいる. 本研究課題は,第二次補正予算分により追加採択されたため,研究に着手する時期が大幅に遅れ,今年度は十分な成果を上げることが出来なかった.
|