抗カルジオリピン抗体やループスアンチコアグラントなどの抗リン脂質抗体の出現を伴う自己免疫疾患「抗リン脂質抗体症候群」の基本病態は、これらの自己抗体による易血栓性であると考えられている。本疾患の診断に、マイクロテストプレートにリン脂質であるカルジオリピンを固相化して行う固相酵素免疫測定法(ELISA)が繁用されてきたが、固相抗原の不安定さや偽陽性の出現などの問題点を抱えている。 本研究の目的は、これらの問題点を解消するためカルジオリピン固相を用いないでより特異性の高い抗カルジオリピン抗体の測定法を開発することにあるが、当該年度の研究で以下の点で明らかになった。 1.γ線などの放射線や電子線を照射しポリスチレンプレートを酸化すると、照射量に依存して酸素原子が導入され、このような処理を施したプレートに直接β_2-グリコプロテインIを固相化すると抗カルジオリピン抗体の認識するエピトープが現れることを既に明らかにしてきたが、市販のプレートでも同程度の性能を有するものが存在することをスクリーニングで明らかにした。 2.SLE患者(308例)を対象に新旧両測定法でIgGおよびIgMサブクラスの抗体を測定したところ、各々のサブクラスで良好な相関が認められたが、旧測定法で偽陽性と判定されていた一群の抗体が新測定法では検出されなかった。 3.新測定法による抗体陽性と血栓症との間に、また検査所見では、ループスアンチコアグラントや梅毒反応の生物学的偽陽性などとの間に有意な相関を認めた。 4.β_2-グリコプロテインIのドメインVを欠失した欠失蛋白を用いると、新旧の両測定法でこの種の抗体が検出できることを明らかにした。
|