気管支喘息とアトピー性皮膚炎では、最近の臨床的・免疫組織学的研究によって、アレルギー性炎症の重要性がクローズアップされ、これらの疾患の本態は一過性の即時型過敏症ではなくて、好酸球性炎症であるとの認識がなされてきた。われわれはこれまでに、1)アトピー型気管支喘息患者抹消CD4^+T細胞は、ダニアレルゲンに応答したIL-5産生が亢進している、2)アトピー型、非アトピー型気管支喘息患者の抹消CD4^+T細胞は、抗原非特異的刺激によるIL-5産生が亢進しているが、IL-2、IL-3、IL-4、GM-CSF、IFN-γ産生は、健常者に比べて有意な差がない、3)無処置マウスにCD4^+T細胞クローンを移入すると、T細胞のIL-5産生能に依存して、液性免疫の関与なしに、気管支粘膜の好酸球性炎症および気道過敏性が生ずる、こと等を明らかにしてきた。T細胞のIL-5産生亢進は、好酸球性炎症を主徴とする疾患の特徴であり、その抑制は、治療上の重要なターゲットと考えられる。アレルゲン特異的T細胞クローンおよびハイブリドーマを樹立し、ヒトT細胞のIL-5産生は、ヒトIL-5遺伝子5'上流の約500bpの転写調節領域によって、転写レベルで制御されること、IL-5遺伝子転写能はIL-2やIL-4転写能とは相関しないこと、また、NF-AT、AP-1、NF-kB、Oct-1の発現とも相関しないこと等を明らかにした。選択的IL-5産生抑制剤OM-01は、IL-5遺伝子転写活性を抑制するが、IL-2、IL-4遺伝子転写には影響しない。以上の知見から、ヒトT細胞のIL-5産生は、IL-5にユニークな転写因子によって、IL-2、IL-4遺伝子とは独立して、転写レベルで抑制されることが強く示唆される。
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