自己抗体であるリウマチ因子を産生する慢性関節リウマチ(RA)患者では、リウマチ因子の反応相手であるIgGの糖鎖がガラクトースを欠くという構造異常を起こしていることが我々により明らかにされ、この糖鎖異常IgGがRA患者の産生するリウマチ因子の特異的反応相手であると考えられている。そこで本研究では、ガラストース欠損IgGと反応するリウマチ因子の糖鎖を特異的に検出する簡便・迅速な血清検査法を確立して早期慢性関節リウマチ患者の高精度検出法を実用化するとともに、この血清検査法の病態生化学的意義を明らかにすることを目的として研究を実施した。まず、健常人血清よりIgGを高純度に大量調製し、これを原材料として我々が最近開発した糖鎖工学的手法を駆使してガラクトース欠損IgGを作製した。なお、このIgG標品がガラクトースを完全に欠損していることは糖鎖構造解析を行って確認した。そこで、96穴プレートにこのガラクトース完全欠損IgGを固定化し、これに結合するRA患者血清中のリウマチ因子の糖鎖をレクチンで特異的に検出するため、IgGの固定化条件や用いるレクチンの種類や濃度、反応溶液中の界面活性剤の濃度、ブロッキング剤の種類およびその濃度、血清検体の希釈率、反応温度や反応時間などを詳細に検討し、血清検査法の構築に必須である至適分析条件を確立することができた。また、被検血清として健常人血清、RA、その他の膠原病、その他のリウマチ性疾患などの各種患者血清を多検体集めて分析した結果、本血清検査法が、従来のリウマチ因子測定法と比較してRA患者の特異的検出や早期RA患者の検出効率において格段に優れていることや、本検査法がRA患者の病態把握にも有効であることが示された。そのため、レクチンを用いた本血清検査法が、今後、RAの診断と治療に大きく貢献するものと思われる。
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