1.試作のDNA診断システムを構築し、自動化のための装置及び部品類を新たに作製する傍ら、自動分析のためのソフトウェアを整備した。(1)サーマルコントローラーとCPUを同期させる装置及びPCR温度出力を減衰させるための装置を作製した。この装置によって、HPLCシステムとサーマルコントローラとが一体化され、完全な自動化システムが実現した。(2)試料をカラム内にトラップするための装置を作製した。この装置によって、試料がカラム内に再現性良くトラップできるようになり、カラム内でのPCR増幅反応が可能となった。(3)カラム内の試料を撹拌する装置を作製した。この装置によって、カラム内でのハイブリダイゼーション反応の効率が上昇した。 2.塩基配列特異的熱溶出クロマトグラフ法を確立した。本システムの基本原理を塩基配列特異的熱溶出クロマトグラフ法(SSTEC法)と定めて、本システムの分離・分析条件の評価を行った。その結果、SSTECパターンのピークの位置は、融解温度(Tm値)に一致することが判明し、測定精度は±0.1℃以下と、従来法(hyperchromicity法)より十倍以上も高精度であった。また、分解能が高く、0.2℃のTm値の差は、SSTECパターン上で十分認識可能であった。 3.種々のモデル実験系を組み立て、遺伝子変異の解析を行った。既にクローニングしたウシの性決定遺伝子(bSRY)の一部の塩基配列を固相プローブとして用い、種々の合成DNAを試料としてSSTEC解析を行った。そして、(1)塩基配列の違いに基づくTm値の違い、(2)一塩基変異の及ぼすTm値への影響、(3)変異部位の違いによるTm値の影響などを検討した。その結果、本法では、たとい一塩基の遺伝子変異でも十分検出可能なことが判明した。 4.ポリメラーゼのフィデリティー解析に応用した。675塩基及び60塩基のbSRY-DNAをプローブとして用い、Taqポリメラーゼの増幅回数の違いによるTm値の変化を調べた。その結果、60塩基では変化がなかったが、675塩基のプローブでは、増幅回数が多い程Tm値の低下が顕著であった。これは、本法がポリメラーゼのフィデリティーを直接解析できることを示すものである。
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