本研究は腎臓集合尿細管のバゾプレシン水チャネルAQP2の分子構造と調節機構の解明を行い、その成果を受け手AQP2の機能的阻害剤を開発し、臨床的に有用な水利尿剤を開発する事をねらったものである。研究代表者らによりクローニングされたAQP2水チャネルの分子構造について遺伝子変異導入機能発現法を用いて種々の検討を行った。その結果、AQP2内の水分子透過孔の部位を推定することが可能となり、選択的水透過性の決定する立体分子機構の解明が進んだ。具体的にはAQP2は6個所の膜貫通部とそれらを結ぶ親水性ループ部から構成されている膜タンパクであるが、我々の検討からは、膜貫通部を結ぶ5つの親水性ループの内の2つのループが選択的水透過性の決定部位ではないかと推察された。一方、集合尿細管での水透過性の調節にはAQP2のトラフィッキングが関与している事が明らかとなった。即ち、バゾプレシンの作用で細胞内の小胞上に貯蔵されていたAQP2が小胞のエクソサイトーシスとともに細胞膜表面に移送され、水透過性が亢進するという調節機構が明らかとなった。ここにおいてサイクリックAMP依存性タンパクリン酸化酵素によるAQP2の第256番目のセリンのリン酸化が重要な調節過程となっている事が明らかとなった。以上の結果を基にAQP2の水透過性孔付近に結合し水分子の透過を抑制する物質、およびバゾプレシンによるAQP2のエクソサイトーシスを抑制する物質の2つの視点から、水透過性阻害剤=水利尿剤のスクリーニングを実施した。その結果数種の水透過性を抑制する物質が発見された。さらにin vivoでの効果を確認するために、候補物質および類似構造物質をラットに静脈注射または腹腔内注入により投与したが、生体毒性が強く水利尿効果の確認には至らなかった。今後もさらにスクリーニングを続け、毒性の少ない物質を探すとともに、発見された候補物質の生体毒性を検討し、毒性の少ない誘導体を合成し水透過性の抑制を検討していく予定である。
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