研究概要 |
現在,予後の前向き試験に関して切除肺癌患者・切除乳癌患者を中心にして,集積につとめている.これまでのretrospective studyで,MRP-1/CD9の蛋白量の発現低下は,乳癌の予後の不良因子となることが判明した.そこで更に肺癌手術症例においてmRNAを抽出し,cDNAを合成し,quantitative RT-PCRを行ったところ,やはりMRP-1/CD9のmRNAレベルでの発現低下が予後不良因子となることが判明した.これらのことからも,MRP-1/CD9の蛋白量の発現低下は乳癌・肺癌ではmRNAのレベルから調節をうけていることが判明した.蛋白合成後の糖鎖による修飾では,一定の糖鎖の付加は認められなかった.また,cDNAからのDNA sequencingでも特にその機能に影響を及ぼすようなpoint mutationは発見できなかった.以上のことから,MRP-1/CD9の発現以上の主体は,プロモーター異常であると考えられる.現在,プロモーター領域のクローニングを施行中である.また,MRP-1/CD9と同じfamilyに属するKAI1/CD82についても,肺癌症例でその発現異常と予後との関連を検討してみたところ,KAI1/CD82の発現低下は予後不良因子となることが判明した.これらの結果は肺癌の中でも転移能の高いと考えられる腺癌において,より強く相関していたことから,MRP-1/CD9やKAI1/CD82の癌転移抑制遺伝子としての性格が示唆された.現在,その他の癌の予後に対する影響を検討するため,大腸癌・胃癌・膵癌症例も集積中である.
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