研究概要 |
さらに,予後の前向き試験に関して切除肺癌患者・切除乳癌患者に加えて切除膵臓癌患者,切除大腸癌患者の集積に努めてきた.これらの切除癌組織を用いて,mRNAを抽出し,cDNAを合成し,quantitative RT-PCRを行った.204例の肺癌患者について検討したところ,MRP1/CD9減弱は無病率およびoverall survivalの両者において予後不良因子となることが判明した.また,109例の乳癌患者に置いても,同様の結果が得られた.また,同じtransmembrane 4 superfamilyに属するKAI1/CD82についても,これらの患者について,予後との関係を調べたところ,やはり,その減弱は予後不良因子となることが判明した.しかしながら,Coxの解析を行うと,MRP1/CD9の減弱のほうが,より不良因子となった.ついで,37例の膵臓癌で検討したところ,やはり1年生存率に置いて両者とも予後不良因子となった.また,KAI1/CD82に比べて,MRP1/CD9の減弱のほうが,やはりより強い予後不良因子であった.85例の大腸癌患者についても検討してみたが,いまだ無病率,overall survivalとも有意の差は得られなかった.また,より簡易に行うために凍結切片を用いて免疫組織学的に検討を加えたが,これは遺伝子レベルとほぼ80-90%の一致率をみて,一般的には免疫組織学的検討で十分であることが判明した.大腸癌および現在集積中の胃癌についても中間集積値が400日ほどにすぎないため,これらの因子が実際に予後不良因子となり得るかどうかについては,まだ結論づけることは出来ないと考えられた.一方,その機能異常の主原因は,遺伝子の点突然変異や糖鎖の異常というより,プロモーターのメチレーションによるものが主体であると考えられた.
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