研究分担者 |
川野 通夫 京都教育大学, 教育学部, 教授 (40109012)
庄司 和彦 京都大学, 医学研究科, 講師 (60196582)
内藤 泰 京都大学, 医学研究科, 講師 (70217628)
高橋 晴雄 京都大学, 医学研究科, 講師 (90171511)
児嶋 久剛 京都大学, 医学研究科, 助教授 (10127079)
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研究概要 |
聴覚機構につき,以下の新たな知見が得られた. (1)蝸電図による研究では,正常人では母音とCV音節に対し,語頭と母音持続部に複合活動電位(CAP)が出現したが,感音難聴者では,これらのCAPの欠落するものがあることが判明した. (2)PETによる聴覚中枢の研究では,正常人では,一側耳から聞いた言葉に対し,対側の聴覚連合野で強い活動が観察された.人工内耳患者では,雑音に対しては一次聴覚野のみ,言葉に対してはそれに加えて聴覚連合野の活動を認めたが,言語習得前失聴患者では連合野の活動が極めて不良であった. (3)脳磁図による聴覚中枢の研究では,正常人では,雑音より語音に対し,聴覚野のより強い反応が観察された.また,正常人では通常刺激耳と対側の側頭葉での反応が同側より早く現れることが解っているが,一側高度難聴者ではこの左右差が無くなる傾向が認められた. 現時点で,言葉の末梢及び中枢での処理機構とその可塑性について成果が得られた.蝸電図におけるCAPは言葉の時間情報を反映しており,その出現パターンが母音と子音で異なること,感音難聴者ではこの抽出パターンが正常人と異なることがわかり,蝸牛での時間情報の抽出が語音の弁別に重要であることが判明した.言葉の中枢処理については,PET,脳磁図の研究で,一側耳から聞いた言葉は対側の聴覚連合野で主に処理されること,雑音と語音との振り分け機構の存在することが明らかとなった.また,言語習得前失聴者で聴覚連合野の活動が極めて不良であったことは,言葉の刺激がないとその中枢処理機構が発達しないことを意味しており,一側高度難聴者の脳磁図の反応が正常者と異なることは,一側の聴覚喪失による中枢の再編成(可塑性)を示唆する。
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