研究課題
基盤研究(B)
本研究の目的は、根管壁に白色光を照射して得られる反射光の解析をもとに根管壁の汚染を判定する機器を試作し、その有用性を検討することであった。まず、汚染根管壁および拡大根管壁に白色光を照射して得られる反射光のスペクトラムを比較した。その結果、拡大後の根管壁からは照射光のスペクトラムに近似したものが得られたのに対し、汚染根管壁からのそれは600nmよりも長波長域の成分を強調していた。次に、白色光を照射して得られる反射光の成分のうち560nmと650nmにおける光強度に着目し、これらの測定および比較を行った。その結果、これらの波長での絶対光量およびそれらの比に関して、拡大を行った根管壁からのものと汚染した歯質からのものとの間に違いを示した。更に、反射光色調測定装置を試作しその有用性を検討した。これは、採取した反射光を二分し、フォトダイオードを用いて560nmおよび650nmにおける反射光量を測定し、最終的に出力信号の極性及びその大きさによって、反射光の色調を表示するものであった。照射光源には白色光を用い、側方に光照射および採光を行なうように2本の光ファイバーを配した測定プローブを介して、白色、赤色、青色の標準色調板および抜去歯を対象として、測定を行った。その結果、健全歯質からは青色や白色の板と同様の極性の、汚染歯質からは赤色の板と同様の極性の出力が得られ、歯垢染色液で染色した試料からはより大きな出力が得られた。以上の研究結果から、試作した色調測定器は根管壁汚染の検出システムとして有用に展開する可能性を示した。また、照射光および反射光の波長域の設定、レーザー光の使用、比較方法、などの測定機器に関する改良、ならびに汚染資質の染色の併用などを含めたより感度の高い測定システムの構成が示唆された。