研究概要 |
研究の目的はキラルなエピクロロヒドリンの実用的な活用法の開拓にある.平成7年度はこの目的に沿い活性型ビタミンDの合成,抗コリンエステラーゼ阻害アルカロイドムスカリンおよびそのジアステレオマ-を得る手法の確立をはかり目的を達成した. すなわち活性型ビタミンDの合成に関してはキラルエピクロロヒドリンの持つ2重のアルキル化能によって2単位の末端アセチレン単位を導入しエピクロロヒドリンの持つキラリティーをアセチレンに由来するオレフィン上に誘起させエピクロロヒドリンのキラリティーにかかわりなく任意のキラリティーをもたらす手法を確立した.これにより活性型ビタミンD,カルシトリオールの合成の鍵部分である2種のA環部の実用的合成法を確立した. 一方,ムスカリンにはそれ自身を含め天然には4種のジアステレオマ-が知られているがすべてを統合的に合成する手法はなかった.そこでキラルエピクロロヒドリンをまずO-ベンジルグリシドールに変換し,これに末端アセチレン単位をアセチレン部をZ-およびE-オレフィンに選択的に還元し,これに対してエピクロロヒドリンに由来するキラリティーの反映下のグリコール化を試みた.選択性は認められなかったが,容易に分離出来るジアステレオマ-を生成した.その結果,光学的に純粋な4種の3置換テトラヒドロフラン誘導体がキラルエピクロロヒドリンのそれぞれから得られることになった.これよりムスカリンおよびエピムスカリン,アロムスカリン,エピアロムスカリンの天然型および非天然型対掌体のすべてが得られることになった.
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