研究概要 |
我が国において大量合成法の確立されている光学的に純粋なエピクロロヒドリンを多目的キラル合成素子として活用をはかることを目的として本研究を行った.当初の研究計画に沿って実験を行い、アミノ酸,アルカロイド,ポリケタイド,テルペン,およびステロイドなどの生理活性天然物のエナンチオ制御合成を検討した.平成7年から平成9年の間に,カリブ産の海藻から単離された魚の摂食阻害作用物質sporochnolAの合成,Streptomyces violaceus2448STV2の産生する生体過酸化阻害作用を持つcarbazoquinocinsAとD,HMG-C_oA還元酵素阻害剤compatinの活性発現に必須構造単位であるcompactin lactone,活性型ビタミンD calcitriolの鍵合成前駆体であるcalcitriol enyneのエナンチオ制御合成,興味ある生理作用を示すネシン塩基であるdihydroxyheliotridaneの合成,きのこから単離された抗コリンエステラーゼ阻害作用を持つきのこ毒muscarineおよび天然に存在するその立体異性体3種epi-muscarine,allo-muscarine,epiallo-muscarineの合成を達成することが出来た.またこれらのうち絶対配置が不明だったsporochnolAおよびcarbazoquinocinsAとDの絶対配置を出発原料のエピクロロヒドリンと関連させることにより決定することが出来た.キラルなエピクロロヒドリンという炭素化合物としては最小の単位を,多種多様にわたるキラル化合物の構築に最大限に活用し得る基本手法を確立することが出来、本研究の初期の目的を達成することが出来た.
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