研究概要 |
(S)-セリンの水酸基を改変することによって合成したホスホニウムの塩化物を用いるベンズアルデヒドとのウィッティッヒ反応の収率は,ホスホニウム塩を分子内塩とすることによって著しく向上し,ピペロナールとの反応でも光学純度の高い高立体選択的なβ,γ不飽和アミノ酸誘導体の合成法となることが分かった. 1.この反応の反応条件の検討をベンズアルデヒドについて行い,更なる収率の改善を試みたものの,成功しなかった. 2.本反応の脂肪族アルデヒド(2-メチルプロパナ-ル),脂肪族ケトン(シクロヘキサノン)及び芳香族ケトン(ベンゾフェノン)への適用は,カルボニルα位水素の存在に起因する副反応あるいはケトン類の反応性の低さのためか,いずれも成功しなかった.従って本法に用いられるカルボニル化合物は芳香族アルデヒドに限定されることが分かった. 3.本法によって腫瘍細胞フェニルアラニン転移リボ核酸に特異的な縮合三環性微量塩基の合成に必要な重要中間体の合成に成功した. 4.窒素上の置換基をメトキシカルボニルとした分子内塩型ホスホニウムを用いることによって,酵母,高等植物あるいは哺乳類のフェニルアラニン転移リボ核酸微量塩基類の共通合成中間体の改良合成を実現した. 5.この反応をヌクレオシドレベルに適用し,微量ヌクレオシドであるワイブトシンの実用的合成を達成した. 以上の結果,本法は3位置換ビニルグリシンの一般合成法としては成立しなかったものの,極めてラセミ化しやすいことが知られている(2-アリールビニル)グリシン誘導体の光学純度の高い製品を(E)-選択的に得る良い方法であることが判明した.
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