研究概要 |
枳 子は酒酔、リウマチ等による全四肢の麻痺やアルコール中毒の治療に有効と伝承される最も重要な消酒生薬の一つであるが、有効成分については全く不明であった。枳 子エキスに、マウスでのアルコール生筋弛緩抑制作用や肝障害抑制作用及びラット肥満細胞からのヒスタミン遊離抑制作用のあることを見い出した。そして、筋弛緩抑制及び肝障害抑制作用成分として、(+)-ampelopsinなどの既知成分のほかにhovenitin I,II,IIIなどの新規dihydroflavonolを得た。主成分hovenitin Iには25-50mg/kgの投与でマウスのD-ガラクトサミンとリポ多糖での肝障害を顕著に抑制し、また、hovenitin Iや(+)-ampelopsinには500mg/kgの投与でマウスのアルコール性筋弛緩を有意に抑制することが判明している。また、ヒスタミン遊離抑制成分として、16,17-seco-dammaraneのメチル基が転位した新規炭素骨格のトリテルペンを有する配糖体hovenidulcioside A_1,A_2,B_1,B_2を明らかにした。これらの配糖体には、いずれも10^<-4>-10^<-5>_M濃度でラット肥満細胞からのヒスタミン遊離を抑制した。この結果、消酒生薬枳 子の伝承薬効を科学的に証明するとともに、新しい抗酒剤としての応用が期待される結果を得た。 2種の消酒生薬地膚子、牛膝について、ラットでのアルコール吸収抑制試験結果を指標に抽出分離した結果、オリゴ配糖体分画に顕著な活性のあることを見い出した 西洋トチノキ種子及びツバキ種子からアルコール吸収抑制成分として得られたescin Ia,Ib,IIa,IIb及びcamelliasaponin A_1,A_2,B_1,B_2,C_1,C_2について脱アシル化反応やアシル基の転移反応を検討し、種々の誘導体を合成するなど、平成8年度の当初計画をほぼ完全に達成した。
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